住人だけの「空」がある──住宅における中庭の魅力

都市の中で暮らしていると、日々の生活はどうしても周囲の環境に左右されます。隣の建物の窓、通りを行き交う人々の視線、あるいは遠くの交通音。私たちはいつのまにか、周囲に「半分開かれた暮らし」に慣れてしまっています。

 

 

そんな中で、私たちは「中庭」という空間の可能性を強く信じています。

中庭は、建築の中に設けられた「空」。それは屋根のない、けれども完全に自分たちの内側にある場所。

通りからは見えず、隣人からも干渉されない。そこには、住人だけの空、光、風が流れています。

 

中庭の最大の魅力は、その「独立性」にあります。

周囲の環境と切り離された空間だからこそ、そこに流れる時間はゆっくりと、静かに、そして自由です。

家のどこからでも視線が届き、しかしその視線は決して外に抜けない。その特性が、住宅にとって絶妙なバランスを生み出します。

 

これは決して「周囲に対して閉ざされた家を作ろうとしている」わけではありません。

 

プライバシーを守りながら、自然とつながる。これほど贅沢で矛盾のない空間が、ほかにあるでしょうか。

 

特に都市部では、窓を開けることがためらわれることもあります。外からの視線、騒音、空気の質──そういったものを意識しながら、ほんの少しの風や光を取り込もうとする。

しかし中庭があれば、そんな遠慮は必要ありません。

風は壁に守られながら家を巡り、光は上から素直に差し込む。誰の目も気にせず、裸足で庭に出ることだってできます。

 

また、中庭は住宅の内部に「もうひとつの自然」を生み出します。そこに小さな木を植えたり、苔庭をしつらえたりすることで、季節の移ろいを暮らしの中心に取り込むことができます。冬には裸木が空を透かし、春には新芽が陽を受ける。家の中にいながら、外の時間を感じられるのです。

 

 

子どもが安全に遊べる場所として、ペットの自由な空間として、あるいは夜に静かに星を眺めるための空間としても機能します。

 

実は!建築費としてもとても良い効果を生み出します。建物内にリビングを作ろうとすると、現在(2025年)だと坪100万円前後するようになりましたが、たとえばウッドデッキで「第二リビング」のような中庭をつくると坪数10万円でできあがってしまいます。

敷地に余裕がある場合は、こんなメリットにあふれた空間をつくらない理由がないなという思いです。

 

中庭とは、外に開かず、内に開く空間です。他の誰のものでもない、「この家の、この人たちだけの空」がそこにはあります。その空は、住人の暮らしを柔らかく包み、守り、励まし続けます。

「CITLUS」は「Creative Idea Through ''Living'' Urban Space(都市の住空間での創造的なアイデア)」という意味です。

 

 

中庭は、私たちAtelier CITLUSにとって一つの解です。

 

 

建築が周囲とどう関わるかを考えるとき、同時に「誰のために」「どこへ向かって開くか」という問いが生まれます。

 

中庭という選択は、その問いに対して「どんな住宅でも、開くべき空がある」と静かに語りかけてくれるように思うのです。

 

 

秋山